四日市市室山町にある、レンガ造りの塀と洋風建築が印象的な工場跡。 かつての繁栄を伝える歴史的な建物ですが、近年は屋根に大きな穴が開き、壁の一部が崩落するなど老朽化が進んでいます。
「近くには幼稚園や小学校もあるけれど、倒壊の危険はないの?」
「なぜ補修されずに放置されているの?」
そんな地域の疑問を解消するため、現地の状況と建物の歴史、そして四日市市の対応について取材しました。
屋根の大穴と崩落。進む老朽化の現状
四日市市室山町に、屋根に大きな穴が開き、壁の一部も崩れ落ちた洋風近代建築の工場があります。近くには幼稚園や小学校もあり、倒壊の危険を感じて以前から気になっていました。先日、建物に近づいて確認してみると、入口には「亀山製絲株式会社室山工場」と書かれた看板が掲げられていました。

明治36年築。亀山製糸が引き継いだ室山工場の歴史
ボロボロに見えるこの建物ですが、実は四日市の近代産業史を語る上で非常に重要な遺産でもあります。
四郷地区のホームページや亀山製絲株式会社の公式サイトによると、そのルーツは以下の通りです。
- 明治36年(1903年): 建物が建設される。
- ルーツ: 四日市を拠点とした実業家、五世・伊藤小左衛門が開設した製糸場。
- 昭和16年(1941年): 「三重県四日市市室山製絲株式会社」を亀山製絲が譲り受け、同社室山工場となる。
築120年以上が経過しており、2010年には展示会の会場として一般開放されたこともありました。当時は普段閉ざされている門が開かれ、多くの人がその歴史的空間に驚いた記録が残っています。

なぜ放置されている?民間所有のハードル
「歴史的価値があるなら、市が直せないの?」と思うかもしれませんが、ここには「私有財産」という壁があります。
民間企業が所有する建物は、行政が修繕・補強・解体を行うことはできません。四郷地区のホームページでは名所・旧跡として紹介されていますが、文化財指定ではないため、保護義務や修繕義務もありません。2010年には展示会会場として利用された記録があり、当時私も偶然通りかかって、普段閉ざされている場所が開放されていることに驚いた記憶があります。
警備会社のステッカーが示す管理の動き
しかし、その後15年間、活用されている様子は見られません。屋根の穴がいつ開いたのかは分かりませんが、倒壊の危険を感じる状態です。昨年9月の集中豪雨では、近くの天白川の水位が急上昇し、警戒レベル4(避難指示)が発令されました。翌日に様子を見に行きましたが、屋根の穴や壁の崩落が急激に進んだ様子はありませんでした。
12月に再び訪れると、9月にはなかった警備会社のステッカーが貼られていました。この3か月の間に、管理者が警備契約を結んだのかもしれません。

【市の回答】市も状況を把握し、改善を要請中
地域の安全を守るため、行政はどう動いているのでしょうか。 四日市市の担当部署である「建築指導課」に問い合わせてみました。
市の回答は以下の通りです。
「市としても2021年(令和3年)から建物の状況を認識しており、所有者に対し改善を要請しています」との回答でした。
建物は放置されているわけではなく、管理者も行政も現状を把握しているようで、一安心しました。早期に補修や解体などが進み、地域の安全が守られることを期待します。


